2009年10月15日
「スポーツの舞台裏」 第9回アスレティックトレーナー

舞台裏で選手と共に戦う

広い視野から適切な練習法

 昨年に行われた北京五輪の日本選手団が何人で構成されていたか知っている人はどのくらいいるだろうか。選手団として参加した576人のうち、アスリートとして世界と戦ったのは339人。残りの237人は表舞台に立つことはなかった。彼らはトップアスリートを支えるスタッフだ。

 「世界で通用していくには、選手1人の技術だけでもコーチ1人の力だけでも足りない。勝敗を決するのは、その選手を取り巻くその他大勢のスタッフたちだ」と、数々のオリンピックでトレーナーを務め、日本のメダル獲得に貢献している白木仁教授(体育)は語る。

 本学はアスレティックトレーナーになるためのドクターコースを全国で唯一設けており、日本のトレーナー養成の要となっている。白木教授も日本に14人しかいない日本体育協会認定「アスレティックトレーナー」の1人だ。

 アスレティックトレーナーには、「医学」と「体育」という2つの領域の知識が最低限求められる。例えば、どの動きがどんな筋肉と関係があるのか、効率よいトレーニング法を構築するために「医学」の知識がいる。また、テーピングやストレッチで怪我を防ぐ。どんな技術を高めることで、高記録や高得点が生まれるのか「体育」の知識を得る必要もある。

 トレーナーは、選手の伸ばすべきところをしっかりと見極め、その能力を最大限にまで伸ばす。アスレティックトレーナーになるには、さらに、柔道整復師や鍼灸師などの医療国家資格やトレーナーの専門的な教育も必要だ。だが、何より重要なのは、知識を融合させ、選手のコンディションや現場に応じて柔軟に対応させる能力だ。

 「トレーナーは専門家バカでは困る」と白木教授は語る。一つの分野からの見方に偏らず、さまざまな視点から方法を考えることで発想を転換し、視野を広げることが出来るという。

 白木教授はこれまでに、シンクロナイズドスイミングやスピードスケートなど、多岐にわたる競技のトレーナーを務めてきた。「競技ごと、そして選手ごとに鍛えるべき筋肉や最適なトレーニング法は異なる」と話す。コーチや選手と話し合って、一人ひとりにあったオーダーメイドのトレーニング法を編み出していくのだ。

 世界の舞台で華々しく選手が活躍するために、裏から支えるスタッフがいる。もらえるメダルは一つかもしれないが、その栄冠はチームに携わるスタッフ全員に輝くのだ。


 【文=光安素子/筑波大学新聞280号より】