2011年2月18日
【筑波大学新聞コラム】スポーツの顔 柔道部 森下選手 筑波大学新聞2月号より

morishita.jpg喰うか、喰われるか。組み合ったまま相手の隙をうかがう。ここぞという瞬間を捉えた時、その瞳はきらめく。

 恒例の寒稽古が行われる早朝の柔道場には、選手たちの気迫が満ちている。そこに、日本代表の証、青い柔道着姿で練習相手と真剣に向き合う、森下純平(体専2年)の姿があった。昨年9月、柔道世界選手権東京大会の66㌔級で優勝。異例の抜てきだったためメディアの注目度は低かったが、代表として見事に日本勢の活躍に貢献した。

 4月の体重別選手権では初戦敗退したにもかかわらず、世界選手権の代表に選ばれた。代表への選出は嬉しく思う半面「自分で良いのか」という思いが常にあったという。「(体重別で)負けたのに選んだのだから、結果を出してこい」。代表に推薦してもらった日本代表の篠原信一監督からは、そんな厳しい言葉も受けた。チャンスを貰ったからには、それを最大限に生かそうと前向きに考えることにした。

 「柔道は自分の人生そのもの」と言い切る。幼少の頃に始めた柔道は、自分とは切っても切り離せない。中学3年で全国優勝。スポーツの名門鶴来高校2年のときにはインターハイを制した。本学を選んだのは、昔から憧れを抱いていたところが大きい。入学後は、世界ジュニアにおいてオール一本で優勝。さらに、シニアの国際大会、グランドスラム東京やワールドカップトビリシで3位に入賞した。成長が目覚ましい柔道部期待の星だ。

 練習では日本柔道のトップが集い、日々刺激を受けるという。「大学の自由な練習環境が、何事も主体的に進める自分の性にあっている」と、練習中とは別人のように柔らかく微笑む。

 几帳面な性格で「汚い部屋は嫌い」。その日の練習について、ノートに書きつける習慣がある。「柔道が好きだからこそ、ここまでやる」。その日に食べた物なども、書き留めている。毎日青汁を飲み、時折実家から届く野菜で自炊をする。一人暮らしをする自身の健康管理に気を配っている。だが、休日には、友達と映画を観に行くなど、学生らしい一面もある。

 世界選手権の結果は「優勝」だった。しかし森下は、この結果に慢心してはいない。「安定して勝ち続けられるのが本当に強い選手。自分には(調子に)波がある」。

 来年のロンドン五輪での金メダル獲得は、森下の中で、大きな目標だ。 実力が拮抗する日本の66㌔級選手らを相手に「まず日本で勝つ」のが目下の目標だという。スタミナの不足など、課題はまだまだある。練習後にウェイトトレーニングを行うなど、努力の積み重ねを怠らない。

 増地監督は「欲を言えば、もう少し無理をしてもらいたいが、自分のペースを持っているのは彼の良い所」と落ち着いてその成長を見守る。

 もうダークホースとは呼ばせない。誰よりも柔道を愛する彼の不断の努力が実る時、その胸には金色のメダルが輝いているだろう。

<社会学類1年 小川玲>
<写真:筑波大学新聞>