2010年10月 6日
スポーツの顔 世界ジュニア走高跳メダリスト 戸邉直人(体専1年)

 大きな一歩を踏み出し、独特のリズムを刻みバーへと向かう。今年7月に行われた世界ジュニア選手権大会の男子走高跳、戸邉直人(体専1年)は流れるような動作で2㍍21のバーを重力を感じさせず、跳び越える。その結果、見事銅メダルの快挙を成し遂げた。9月のインカレでも2位に輝いた期待の星である。

 身長は198㌢。「電車に乗るとつり革に頭が当たったり、頭を下げないと扉を通れないので大変だ。目立って良いことはない」と言う。しかし、より高いバーを越えることを競う走高跳では、身長が高いと、重心の位置も高くなり有利である。「走高跳は他の人との戦いでもあるが、記録との戦い。だから面白い」と慎重に言葉を選び、ゆっくりと語る。

 戸邉は自他共に認めるマイペースな性格で、焦ることなく純粋にバーと向き合うことが出来る。試合には、前日からイメージトレーニングをしてテンションを上げ臨む。強みである精神力の高さを生かし国内外問わず、結果を残してきた。

 そんな彼でも跳べなくなったことがある。それは、高校2年のインターハイの決勝を棄権せざるを得なくなった「気胸」を発病したときである。「気胸」は肺に穴があく病気で、やせ形で高身長の人に起こりやすい。戸邉は手術を余儀なくされ、2週間ほど入院した。

 「今までのように跳ぶことが出来るのか不安を覚えた。しかし、この不安は練習することでしか取り除けないと思い、これからどうやって感覚を取り戻していくのかを考えた」と振り返る。その言葉を実行するように練習に打ち込み、翌シーズンには高校生記録を20年ぶりに塗り替えるという快挙を成し遂げた。

 競技に対しまっすぐに向き合っている戸邊だが、意外にも練習以外の時には競技について考えないのだという。休日には地元である千葉の友人たちと遊びに行くなど気分転換をする。千葉から江ノ島まで自転車で片道半日かけて行き、趣味のサイクリングを楽しむ日もある。休めるときには休み、切り替えを行うのが大切だという。

 自己ベストは高校生の時に出した2㍍23。大学に入りいまだ記録更新が出来ていないのは、昨年冬にまた気胸を発病し、筋力アップが出来なかったことにある。「今足りないのは筋力と技術。まだ身長に頼りきりな部分がある」と話す。

 当面の目標は自己ベストの更新、そして来年の世界陸上や再来年のロンドン五輪出場だ。「正直世界陸上は難しい目標。でも目標は高めに設定し意識を高く持つことが大切だと思う」と決意を述べた。持ち味である長身に努力の成果として筋力がついた時、強い意志を持つ期待のエースはよりいっそう明るい輝きを放つだろう。

【写真・文=田中里奈/筑波大学新聞288号より】

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