2010年5月17日
スポ裏 ドーピング

スポーツの世界では、アスリートたちが肉体を駆使した華々しい活躍を繰り広げている。しかしその裏では、一部のアスリートがドーピングを行ってきた。ドーピングは、近代スポーツの負の側面の一部だ。

 ドーピングとは、スポーツ競技などで好成績を挙げるために、筋肉増強の働きがあるたんぱく同化薬や、疲労や痛みを感じさせなくする働きがある興奮薬などの禁止物質を、服用、注射、あるいは外用することだ。体内から禁止物質が検出されなくとも、その所有や使用の企て、ドーピング検査の拒否なども禁止行為とされている。また、指導者によるアスリートへの禁止物質の投与やその企て、隠ぺいもドーピングとみなされる。これらには「幅広い観点から薬物乱用を防止するという目的がある」と、アンチ・ドーピング活動に携わる向井直樹准教授(体育)は話す。

 一般的に検査で陽性反応が出ると、1回目は2年間の活動停止処分が科され、2回目が発覚した場合は永久追放となる。

 近代スポーツ史上最初に確認されたドーピングは、1865年、オランダで行われた水泳大会でのこと。オランダ人選手による覚せい剤の使用だった。最近では、中国の女子柔道選手が、昨年の世界選手権でのドーピング検査で禁止物質に陽性反応を示した。彼女は一昨年の北京五輪で金メダルを獲得していたが、金メダルのはく奪と2年間の出場停止処分が科されることが決まった。

 世界のドーピング検査での陽性率は、ここ約10年間で2%前後を行き来している。公表されている2005年の日本の陽性率は0・34%で、人数にして10人。日本の陽性率は世界的に見ても低く、同じ年のポーランドが6・6%、フランスが5・3%などヨーロッパで陽性率が高い傾向がある。陽性反応が出た物質ではたんぱく同化薬が最も多く、次いで興奮薬が多い。

 そもそも、なぜドーピングを禁止しているのか。「違反者を排除するためではない。真の目的は、全てのアスリートによる公平な条件のもとでのプレーを保証することだ」と向井准教授は言う。

 競技後のドーピング検査では、競技終了後に速やかに検体(尿)の採取が行われる。検査の透明性を保つため、採尿には同性の検査員が立ち会う。もし過去1週間に何らかの薬剤を服用した場合は自己申告が必要だ。

 スポーツとドーピングの関わりに比べ、ドーピングへの対処方法が確立してきたのはつい最近のことだ。オリンピックでドーピング検査が始まったのは1968年、検査の透明性を確保するために世界アンチ・ドーピング機構(WADA)が設立されたのは99年、財団法人日本アンチ・ドーピング機構(JADA)は2001年に設立された。JADAは「ドーピング防止のための選手必携書」を作成しアスリートに配布している。禁止物質や使用可能な薬物の情報は、WEB上からも閲覧が可能だ。

 「多くの機関がドーピングについて情報を公開しているが、アスリートも自分から情報を積極的に得る努力が必要だ」と向井准教授は強調する。現に、日本国内のドーピング検査での陽性反応の8割が、禁止物質と知らずに服用していた「うっかりドーピング」だった。アスリートや指導者、各種機関など、スポーツに携わる人全ての努力があって初めて「クリーンなスポーツ」の実現が可能になる。

(本紙・根津彩香=国際総合学類)