2009年9月 9日
<第4回> スポーツ選手の国籍変更について

北京五輪まで2ヶ月を切り、様々な問題がメディアを賑わわせていますが、前回河合先生の「大気汚染」の問題に引き続き、今回はスポーツ選手の「国籍制限」についてお話ししたいと思います。

 いろいろな五輪競技で「国籍制限」という言葉が聞こえてきます。五輪の選手は国や地域の代表として参加するため国籍が必要です。ところが最近は国 籍を変更する選手が増えています。例えば、04年アテネ五輪サッカー日本代表の田中マルクス闘莉王(トゥーリオ)選手は、ブラジル出身です。陸上ではアフ リカ出身の中長距離選手が国籍を変更するケースが多く、昨夏の世界選手権女子1500mで中東のバーレーンに初の金メダルをもたらしたのはエチオピア出身 の選手でした。
 では、なぜ国籍を変えるのでしょうか?結婚や家族の事情などによる場合もありますが、問題になるのは五輪出場を目的にした国籍変更です。競技レベルの高 い国では五輪の代表になるのは至難の業です。著者はバドミントンを専門にしていますが、バドミントン競技でも、近年世界ランキング上位を独占している中国 選手の海外移籍及び国籍変更が見受けられます。それほど競技レベルの高くない国に国籍を変更すれば五輪出場のチャンスが大きくなるからですね。五輪に出場 して活躍すれば多くのスポンサーが集まります。このため選手自ら充実した練習環境や経済援助を求め国籍変更を希望するケースが出てくるのです。
 さて、そもそも国籍の変更は容易にできるのでしょうか?五輪参加基準はIOC(国際オリンピック委員会)から一任された国際競技連盟などが競技ごとに独 自のルールを定めています。サッカーでは、ある国の代表として公式戦に出場した経験があると、原則として別の国の代表にはなれません。06年W杯ドイツ大 会前、カタールが高額年棒でブラジル人選手の獲得を画策したことが理由でした。国際陸上競技連盟は、2005年から「国籍変更から3年間は代表になれな い」と決めたようです。バドミントンでは、国籍変更先のバドミントン協会の認可にかかっているようです。

「国籍変更」の規制が進む理由はどこにあるのでしょうか?いろいろな競技で国籍を変更する選手が増えてきたことにあるようです。新聞は、卓球選手の 国籍変更問題を扱っていますが、その冒頭文は、このような文で始まります。「サッカーの試合で中国がカタールに敗れたとしよう。その時カタールが全員ブラ ジルから国籍変更した選手だったらどう思うか」。皆さんはどのように思いますか?
国別対抗という大会本来の面白さがなくなると同時に、世界の注目度や競技の普及に影響が出るでしょう。このことで、五輪の実施競技から除外されるという危 機感を持っているところさえあります。スポーツにおけるグローバリゼーションへの賛否は今後益々盛んになってくることと思います。
新聞記事    


【引用元】筑波大学体育センター 話題の宝庫より

【著者】吹田真士