2011年8月 9日
第14回水泳世界選手権大会 水球競技総括 高木英樹監督

第14回水泳世界選手権大会男子水球競技総括

男子水球日本代表チーム監督 
筑波大学人間総合科学研究科教授  高木英樹

 

2011年7月18日~30日の日程で、上海東方体育中心(Oriental Sports Center)において、第14回水泳世界選手権大会が開催され、男子水球競技には、監督を務めた私の他に、青柳勧選手(平成14年度体専卒、ブルボンウォータポロクラブ柏崎)、永田敏選手(平成14年度体専卒、ブルボンウォータポロクラブ柏崎)、志水祐介選手(平成22年度体専卒、ブルボンウォータポロクラブ柏崎)、棚村克行選手(体育専門学群4年)の4名が筑波大学関係者として参加しました。

 

卒業生の3名は、いずれも昨年度新潟県の柏崎市において、日本初の本格的社会人水球クラブとして立ち上がったブルボンウォータポロクラブ柏崎に所属しており、そのクラブ代表を務めるのも本学OBで新潟産業大学学長を務める広川俊男先生です。

 

水球の世界選手権は、世界5大陸から計16チームが参加し、4チームずつ4つのブロックに別れて予選リーグを戦い、上位3チームが決勝トーナメントへと駒を進めます。
アジアからは、日本のほか、中国、カザフスタンが参加し、日本は、クロアチア、カナダ、ブラジルとともにC組に入りました。
日本チームのこれまでの最高順位は14位であり、本大会における目標としては、予選リーグ突破を突破し、過去最高順位を得ることと、来年のロンドンオリンピックアジア地区予選を睨んで、アジア勢中最高位を達成することを掲げました。 

 

水球は、日本でこそあまり馴染みがありませんが、発祥は19世紀末の英国で、1900年の第2回パリオリンピックにおいて、球技として一番最初に採用されなど、古くからヨーロッパでは盛んに行われていました。
最近では、セルビア、クロアチア、モンテネグロなど、旧ユーゴスラビアを構成していた国々が強く、その他では、ハンガリー、イタリア、スペインなどが強豪国として上げられます。
非ヨーロッパ勢としては、アメリカ、オーストラリアなどが強いわけですが、とにかく「水中の格闘技」と呼ばれるほどコンタクトの多いスポーツですので、体格で劣る日本にとっては、世界の舞台で1勝を上げることだけでも大変な事といえます。

 

 

日本代表チームは、事前の強化合宿を国立スポーツ科学センターで行った後、7月15日に上海入りし、上海中医薬科大学のプール等で調整練習を行いました。
そして迎えた7月18日、初戦でカナダと対戦しました。カナダは、日本と同じく若手が多く、泳ぎを活かした攻撃が信条のチームです。
戦前の予想では、互角の勝負ができるのではないかと予想しておりましたが、蓋を開けてみると、ヨーロッパの強豪クラブで活躍する選手に翻弄され、5 - 11で大敗してしまいました。

 

しかしこれで尻込みをしているわけにはいかないので、続くブラジル戦では、アグレッシブなディフェンスからカウンターアタックをどんどん繰り出し、ブラジルの個人技を封じにかかりました。
これが功を奏し、前半リードされるものの、後半じりじりと追い上げ、疲れの見えたブラジルに果敢な攻撃をしかけ、結局逆転して13-11で勝利することができました。
続くクロアチア戦は、世界最強国の一つに挙げられる相手ですので、胸を借りるつもりで思い切ってぶち当たりました。
しかしその実力差はいかんともしがたく、結局7-18で破れ、世界の壁の厚さを思い知らされました。

 

以上の3試合を終え、予選リーグで初めて1勝をあげることができ、日本はC組3位として念願の決勝トーナメントに駒を進めることができました。
これまで過去の世界選手権では、すべて予選リーグで全敗し、下位順位決定戦に回っていたわけですから、日本にとっては快挙といえます。

 

そして迎えた決勝トーナメントの相手は、D組2位のドイツ。
ドイツはベテランの試合巧者を揃えたチームであり、日本にとっては格上の相手と言えます。
しかし予選リーグにおけるドイツの戦いぶりを徹底的に分析し、彼らの弱点を突くことに徹しました。
具体的には、右サイドの選手が相対的に弱いので右サイドの選手にボールを持たせる一方で、左サイドのエースとセンターフォワードを徹底マークしたのです。
この作戦が当たり、試合は追いつ追われつの大接戦となりました。日本を甘く見ていたドイツにとっては、肝を冷やしたことと思います。
しかしながら、最後には力の差が出てしまい、6-8で惜敗しました。
しかしこの試合を戦え終えて、敗れはしたものの、選手達は「自分達はやれる」という自信をつけたように思います。

ドイツに敗れ、ベスト8の夢は絶たれましたが、日本にとっては過去最高位を目指した戦いが続きます。


次なる相手は、オセアニア代表の強豪オーストラリア。オーストラリアとは、ワールドリーグのアジア・オセアニア予選で何度も対戦していますので、お互い手の内は分かっています。
しかし、体格とパワーではオーストラリアに分があり、日本は得意の組織力でなんとか対抗しようとしました。
試合の前半こそ、シーソーゲームの展開となりましたが、第4ピリオドに入ってオーストラリアが怒涛の攻めを見せると、そこまでよく守ってきた日本でしたが、抗し切れず連続失点して、9-15で敗れてしまいました。
この試合の結果、日本は11~12位決定戦に回ることになり、最終戦でルーマニアと対戦することになりました。

ドイツにしろ、オーストラリアにしろ、ルーマニアにしろ、実力的には日本をかなり上回っていますので、たとえ負けたとしても、「ここまでよく戦った」と言われるかもしれません。
しかし最後の試合だけはなんとしても勝って日本に帰りたいと思いを強くし、選手に対しても檄をとばしました。


そして迎えたルーマニア戦。本大会屈指のセンターフォワードを要するルーマニアに対して、通常のゾーンディフェンスでは守り切れませんので、日本はメジャーファールもいとわない捨て身の戦法で臨みました。
その結果、次々と日本のディフェンダーは20秒間の退水を命ぜられますが、一人少ないパワープレーの状態を懸命のディフェンスで凌ぎ、相手に得点を許しませんでした。
逆に攻めているのに得点できないイライラがルーマニアに募り、その隙をついて日本がカウンターアタックを決めたのです。
まさに肉を切らして骨を断つような戦いぶりで、日本はルーマニア相手に15-18で勝利することができました。

 

この結果、日本はこれまでの最高順位である11位を確保することができました。
たかが11位ですが、日本の水球にとっては大きな前進となる11位なのです。

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                    (写真:男子水球日本代表選手団)

   青柳選手:前列左から2番目、志水選手:前列左から4番目、棚村選手:後列右から1番目
   永田選手:後列右から6番目、高木監督:後列左

 

本大会を通して、本学関係者は大いに活躍してくれました。
特に青柳選手は、キャプテンとしてチームをまとめるのに腐心してくれましたし、志水選手は得点ランキング9位にランクインするほど、センターフォワードとして、日本の攻撃を引っ張りました。
また棚村選手は、ゴールキーパーとして、日本のゴールマウスを死守し、雨あられと飛んでくるシュートをよく止めてくれたと思います。

 

今後は、この世界選手権の結果に満足することなく、さらに強化を進め、来年1月に日本で開催されるロンドン五輪アジア地区予選を勝ち抜き、なんとしてもオリンピック出場の切符を手に入れたいと考えています。