2010年2月12日
スポ-ツの顔 78キロ級の新女王 緒方亜香里(体育1年)

 昨年12月に行われた柔道グランドスラム東京大会女子78キロ級決勝。相手が2つの有効を奪い大きくリード、残り時間はわずか。しかし緒方亜香里(体専1年)は冷静だった。寝技には絶対の自信を持っていたからだ。「相手のスタミナが切れてきた時こそ好機」。そう考え相手の隙を伺っていた。緒方の予想通り相手は疲れ始め、徐々に技が決まり出し、残り1分で寝技に持ち込むことに成功した。そのまま相手を抑え込み、横四方固めで一本。鮮やかな逆転勝ちを果たした。
 

 緒方が自分にとって一番大事な時期だったと振り返るのは高校時代。柔道部の監督に「お前は絶対、日本一になれる」と言われ続けた。監督は既にパワーとスタミナを兼ね備えていた緒方の素質を見抜いていたのだ。「最初は信じられなかった。少しずつ自信もついてきたし、またそうならねばならないと思うようになった」と振り返る。
 

 そんな気持ちと裏腹に、1、2年生のころは試合の度に負け続けた。高校は寮生活、柔道漬けの毎日。なかなか結果に結びつかなかったが、緒方はあきらめなかった。持ち前のプラス思考を武器に、次は絶対勝つという思いで、毎日夜遅くまで練習を重ねた。
 

 転機が訪れたのは2年生の時。地元九州で開かれた地方大会の団体戦決勝。チームの勝ち負けが決まる重要な一戦に臨むこととなった。それまで緒方は団体戦で負け続け、自信を失いかけていた。しかし彼女はその試合に見事勝利。それほど大きな大会ではなかったが、自分の力でチームを優勝に導いたこの一勝で緒方は大きな自信をつけた。
 

 高校卒業後は男女合同の柔道部を持つ本学に進学。男子とも練習を重ねさらに技を磨いた。世界ジュニア、講道館杯で優勝、先日開かれたグランドスラム東京大会でも見事優勝を果たした。
 

 「小学校のころは空手をやっていたんですよ」と振り返る。空手も全国優勝するほどの腕前があり、中学入学後も空手を続けるか迷っていたという。そんな時、兄から借りて手に取ったのはある柔道漫画。それがあまりにも面白く、中学入学後、柔道部に入部した。しばらくして緒方は空手をやめた。その時には「早く次の技がやりたい」。練習前は「放課後の練習が楽しみで仕方がない」。そう思うほど柔道の虜になっていたからだ。柔道を始めて6年以上経つが、その気持ちは今も変わらない。
 

 大学生活は一人暮らし。高校時代には叶わなかった休日の買い物も楽しんでいる。大学生活は、高校時代に比べれば自由な時間が多い。「その分誘惑も多いので気をつけたい」と笑う。
 

 現在の目標は今年8月に東京で開かれる世界選手権への出場だ。そして2年後のオリンピックの出場に繋げたい。「自分は小細工を使わない。まっすぐな柔道を貫きたい」そう語る彼女は既に世界を見据えている。                    

                                                                                         【写真・文=加藤茂行/筑波大学新聞283号より】ogatasan.JPG